「ペパーミント・キャンディ(박하사탕)」は、1人の男性が線路で「僕は戻りたい」と
泣き叫びながら、自殺を図るシン―から始まります。そして、映画は彼の二日前、1ヶ月、
また二年前、五年前、とうとう二十年前をさかのぼりながら、彼の人生を見せてくれます。
そういうストーリーの展開は、歴史と個人は決して無関係ではないというメッセージを
強く伝えるためのようです。その20年間というのは、1979年から1999年までで、
韓国の現代史において、人々は製造工場での海外輸出ピーク、軍人によるクーデター、
民主化への闘争、経済の成長期ピーク、IMF危機などを経験しました。
映画は、そういう現代史をバックに、男性の人生がどういうふうに転換されたのかを描いています。
彼が自殺する寸前、泣き叫んだ「戻りたい」との一言!いつごろの自分に戻りたいのでしょうか。
映画の最後になると、彼の気持ちが見えてきます。
そして、映画のタイトルを「ペパーミント・キャンディ」に付けた理由も。
「ペパーミント・キャンディ(박하사탕)」は、さすがベニス映画祭で監督賞や
最優秀若手演技賞を受賞しただけに、なかなか味のある作品だと思います。
(2002年10月9日 沖縄タイムス「大好きAsian Movie」にて掲載されたものを一部編集しました)